血の掟

某アーティストが若きころの体験。

その方は時に過激なことをやってのける型破りな性格故に、トラブルを起こすことが多々あった。

作品展への作品を作るため、彼はアイデアを練っていた。そして考えた挙句、日本人の食への警鐘を鳴らすため牛の頭や内臓を展示することにした。

普段食べている肉は動物の死体であり、生きているものを殺して口にしていること等を考えて欲しかったのだ。

作品は出来上がったが、当然生の肉なので数日たつと悪臭を放ち、衛生上の理由から強制撤去されてしまった。彼は展示場でもトラブルを起こしてしまったが、この作品を作るためにもある事件を起こしてしまう・・・・・・

彼は死体そのものを作品にしたかったので、何の考えなしに牛の死体を手に入れるため、アポなしで屠殺場に行った。そして「作品を作るための材料を集めに来ました。」とだけ職員に告げ、勝手に廃棄する予定の内臓などを袋に詰めた。

そうこうしていると事務所から職員がやってきて
「なにやってんだ!!」
彼は事務所に呼び出され、勝手に拾っていたこと怒られた。彼は職員に謝罪し、戦利品は没収となった。

しかし、どうせ廃棄するモノなのだから持って帰っても良いだろう・・・そう考えていた彼はめげずに帰るふりをして、またこっそり牛の耳や目玉などを袋に詰めた。

彼が拾った臓器や肉片は洗っていないので、血や粘液がべっとりと付着している。作品にはこういう生々しいものが欲しかったのだ

そしてこそこそと帰ろうとしたとき、「ブルーン」とエンジン音がした。

出てきたのは20台ばかりの原チャリ。そしてあっという間に囲まれてしまった。どうやら屠殺場の職員らしく、非常に怒っている。

「早く出せ」そして彼から牛の耳などが入った袋を取り上げた。

「血のついたものを持ち出すとはどういうことだ!!」彼はなにが彼らを怒らせたのか理解できなかったが、あまりの剣幕に身に危険を感じ、素直に指示に従った。

後で分かったことだが、日本の穢れの思想から血のついたままの肉を世に出すことは不浄なことであり、恥であると考えているのだという。彼のした行為は彼らからすれば恥部を世間に晒す行為だったのだ。

仕方なく彼は、きれいに洗われ血が落ちた牛の首や臓物を業者づてで手に入れたのだという。


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