骨の所有

文化人類学を専攻するポスドクの話。日本人の骨格や顔の変遷を研究テーマとしており、江戸から鎌倉時代、老若男女様々な骨をサンプルとして扱っている。

骨を調べることで当時の暮らしぶりや風習、健康状態が分かる。死してなお歯黒は黒光りしており、花柳病が蔓延した江戸時代の骨は梅毒による変形が見られる物もある。惨い処刑方法も骨から窺い知れる。

庶民の顔も今と昔では大きく異なる。硬い食物を口にする機会が多かった大正以前の庶民の顔は大きくエラが張っており、現代の人が見ると異国の人の様な風貌を呈している。また、庶民と貴族では食事内容が大きく異なっているため顔付きに差があったらしく、公家顔と称される顔は食物の違いによるものと云う話もある。
骨、特に顔の変遷は人類学的に興味深いテーマであるらしい。

顔を研究するために様々な人間の頭蓋骨を所有する訳だが、これが決まって生前の姿でそのポスドクの前に現れて来るそうだ。

最近では鎌倉時代に亡くなった少女の頭蓋骨を所有しているのだが、その少女が生前の姿、つまり霊として現れて枕元に立つという話である。しかし、特に悪さをしたり祟ったりする訳ではない。何か訴えたいことがあって出て来ている様な感じは受けているが、何を伝えたいのかは良く分からないそうだ。

そして、今までいくつもの頭蓋骨を所有し、何体もの霊に遭って来たが、今のところは不幸なことは起こっていないらしい。おそらくはちゃんと供養して欲しいのだろうけど、研究サンプルを毎回お寺に持って行っては大変な手間なので、気にしないようにして過ごしているのだということだ。

どうも遺骨を所有することで、骨となった故人の供養を受け持つ義務のような縁が生じるらしく、それを知ってか骨となった故人の方から助けを求めてくる怪談話もある。

血縁の有無、研究目的や意図しない形であっても関係なく、所有するという事で縁もしくは責任が生まれているようだ。

では骨を手放すとどうなるのか??というと、所有という縁が切れたからか、幽霊の出現はピタリと納まるという話である。



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