ピストルおじさん

「ピストル貸してやろうか?」

黒いトレンチコートに真黒い皮製のキャップという怪しい出で立ちの男に声を掛けられた。

子供達は放課後、学校近くの公園で鬼ごっこのような遊びをしていた。長らく遊んでいるうちに日が傾き始めたときのこと、ちょっとしたことで口論が始まってしまった。

鬼がタッチしたとか、されていないとか些細なことだったがヒートアップしてぶっ殺してやるとか乱暴な言葉を叫びあっていた。

鬼役と逃げる役の2グループで口論をしていると、夕日を背にして顔が良く見えないが全身黒ずくめの大人の男性がこちらに近づいて来た。

子供達の前に来ると
「ピストル貸してあげようか?」

あっけにとられているともう一度
「ピストル貸してやろうか?」

普通の人じゃない感じがして子供達はすっかり引いてしまい「結構です結構です」と丁寧に断ったところ
「ああそうか」と、男はすんなり帰って行った。

程なくして、その町内で薬物と拳銃の所持容疑で男が逮捕されたという事件が起こった。公園付近でうろついているところを職質されて発覚したらしく、子供達の間では本物のピストルを借りるところだったと、大変な騒ぎとなった。


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