偽汽車


常磐線での説話。

明治時代、東京都葛飾区亀有など各地で、夜遅くに汽車が線路を走っていると、しばしば怪現象が起きた。汽車の前方から汽笛が聞こえてきたかと思うと、その汽車の走っている線路上を、逆方向からこちらへ向かって別の汽車が走って来る。

機関士は「危ない、衝突する!」と慌てて急ブレーキをかけるが、その瞬間、あちらの汽車は忽然と姿を消してしまうのである。

このような怪現象が続いたある晩のこと。

1人の機関士が汽車を走らせていると、件の偽汽車が現れ、こちら目掛けて走ってきた。

機関士は「こんなものは幻覚に決まっている」と、ブレーキをかけずにそのまま汽車を走らせた。衝突するかと思われたそのとき「ギャッ!」という叫び声と共に、偽汽車は消え去った。

翌朝にその辺りを調べたところ、汽車に轢かれた狢の死体が見つかった。

それを見た人々は、線路を引かれたために棲み処を壊された狢が、機関車となって人々を化かしていたのだろうと噂し、この狢を供養するため、亀有の見性寺に塚を作った。

現在ではこの塚の石碑が、見性寺の境内に「狢塚」の名で残されている。

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